人生で「いい音楽」に出会いたいなら「音楽ではないこと」をたくさんやってみよう

(!前提!)ここで述べている「良い音楽」とは、「好物の音楽」であり、自分にとっての「好きな食べ物」のようなもののことを指しています。演奏技術のすごさだとか、世界に名を轟かせただとか、単にそういうことではありません。自分の好みに出会うための「美味しいもの探し旅」のことだと思ってください。

「趣味が音楽鑑賞だから良い曲を発見したい!」

「いろんな曲を知って博識になりたい!」

「いい音楽を研究して自分の演奏・作曲に活かしたい!」

理由はさまざまあるかと思いますが、人は常日頃から良い音楽との出会いを求めています。

そうでなければ、世の中に年中無休であたらしい音楽がずーっとあふれつづけることもないはずです。

では、どのような手段をつかって曲を探せばよいのでしょうか?

もちろん、リアルならば友人におすすめをきいてみる、インターネットならYouTubeの中からおすすめの動画を探すのが常套手段ではあるかと存じますが、今回はそういった短期スパンでの出会いの話は一旦置いておくとして、もっと人生単位で音楽と豊かに出会うにはどうすればよいか、思ったことを書きました。

『良い音楽に出会うために』

何からはじめたらよいのでしょう?

良い音楽に出会うためにすべきことは、音楽から離れてみることだと思うのです。

いつもそうですが、今回書いていることに関しましても、超!いち個人の意見にすぎないので、ゆる〜く読んでいただけたら嬉しいです。

小説がきっかけで出会った音楽

「1Q84」と出会って

村上春樹さんの「1Q84」が発売されたばかりで、ちょうど世間を賑わしている頃、私もほぼリアルタイムで読みました。

『明日返却日だ!』と大急ぎで全編を翌朝5時までかけて一気読みしたのが懐かしいです。(新刊だったので返却のスパンが短かったのと、私が『まあ明日こそは読むだろう』と油断して過ごしていたせいです。)

そのお話の中に登場するヤナーチェクのシンフォニエッタがとても印象的でした。

金管楽器がメインで、旋律をパートごとにこだまのように繰り返していくのが特徴としてひとつあります。曲の雰囲気はおごそかで、奥ゆかしく、それでいて巨大なエネルギーの渦を感じます。

曲の演奏時間は2分程度で短く、その時間の中でゆるやかに、魚の群れが徐々に巨大なものになっていくかのごとく存在感をふくらませていく…そんな感動的な曲です。

「1Q84」の神秘的で謎めいた雰囲気と相まって、その曲が大好きになりました。
大学1年生前期の実技試験曲として演奏したほどです。

「ねじまき鳥クロニクル」と出会って

ここ最近、わずかばかりではありますが、「読書」というものを生活の中にほんの少し取り入れるようになりました。

中学生頃までは熱心に図書館に通う方だったのですが、それ以来、読書をするなんて本当に久しぶりです。

そんな中で、当時好きでよく読んでいた村上春樹さんの本を手に取りました。「ねじまき鳥クロニクル」という上・中・下巻に及ぶ、ちょっと長めの小説です。

各巻には印象的な副題がついていました。

上巻には「泥棒かささぎ編」

中間には「予言する鳥編」

下巻には「鳥刺し男編」

という、どれも鳥に関する副題であり、この3つの中でも「泥棒かささぎ」、「鳥刺し男」が私でも知っている有名なクラシック曲に関係していることはすぐにわかりました。

特に「鳥刺し男」というのはモーツァルトのオペラ「魔笛」に登場する人物であり、彼は陽気なキャラクターで、彼の歌う曲もまた陽気で楽しい歌であるということを知っていました。

しかしながら、私の貧相な知識ではのこりの2曲について何も知らなかったので、これを機会に、読書と並行しながら少し曲のことも調べたり、聴いてみたりしました。

「泥棒かささぎ」はロッシーニ(イタリアのお料理大好きおじさん)のオペラでした。名前だけは聞いたことがあったので、曲を聴くのははじめてでした。

銀のスプーンが盗まれ、犯人探しをし、しっちゃかめっちゃかしたけれども、結局もっていったのは鳥(かささぎ)だった…。というあらすじのようです。聞く限りではおちゃめな話ですね〜

いかにも序曲らしい、軽快なメロディーでした。まさに物語の幕開けという感じがします。

「予言する鳥」というのは、シューマンのピアノ曲でした。

物語の状況にこれ以上なくピッタリな雰囲気で、暗い森の怪しげな空気と、そこを彷徨っている絶望感のようなものを感じます。

そのほかにも実在する曲がいくつか本編中に出てきます。

とくに主人公が何度も通っていた駅前のクリーニング店では、店主が好みの曲を爆音で店内に流していて、店奥でゴキゲンにアイロンをかけているシーンがあり、その光景を想像してみると、かなりおもしろかったです。

ニコニコ動画のタグ検索から出会った音楽

(2024年7月現在、先月から引き続き大変なことになっているニコニコ動画ですが、わたしもニコニコ動画は高校時代から大人の今になってもずっと現役のままで楽しませてもらっているので、大変心を痛めております。視聴者としても、投稿者としても、ショックです…。)

【ニコニコには欠かせない】ボカロ文化

自分が曲を作る上で、いまや必要不可欠な存在であるボーカロイドに出会えたのも、もちろんニコニコ動画のおかげです。

まずボーカロイドのキャラクター本人たちに溢れんばかりの魅力があります。それは、制作者が精魂込めて楽曲及び動画を創り、そこに視聴者の色とりどりのコメントが散りばめられ、そういった営みを繰り返していくうちにボーカロイド一人ひとりに豊かなキャラクター性・人格が確立されていったからです。

曲を投稿する人も、動画を見てコメントするひとも、一体になって盛り上がる素晴らしい文化です。

そしてタグ検索機能のおかげで、たくさんの個性的で魅力的な楽曲に出会うことができました。

なんと表現したらよいものか少し迷いますが、タグ検索機能のよいところは、動画から動画への『横移動』がとてもしやすいのです。場合によっては『ななめ横』だったりするのも愛おしい点です。

関連性のある、でも思っていたのとはちょっと違う動画一覧に飛ばされる感覚が非常にエキサイティングでした。

【まわりまわって】平沢進さんとの出会い

わたしがもしニコニコ動画を徘徊する習性を持ち合わせていなければ、こんなにも素晴らしい音楽に出会う機会を失っていたことでしょう。

大学生時代、あの日の私は部屋をまっくらにして、ちょっとサイケなボカロ曲を聴くことが大好きでした。お恥ずかしい限りですが、まあそういうお年頃だったのでしょう。

その中の曲のとあるタグで、平沢進さんの「世界タービン」の動画に出会いました。

最初の衝撃といったら、それはもうものすごいものでした!

洋楽のPVはおろか、PVというものをほとんど見たことのない私にとって、それはあまりに個性的かつ刺激的な表現だったので、映像と曲とがたちまち脳に刷り込まれていったのを覚えています。

世の中にこんな音楽・こんな映像で表現する人がいただなんて!と感動しました。

それからはすっかり平沢進さんのファンになり、当時ニコニコ動画にあった平沢さんの音源や貴重なライブ映像をたくさん拝見しました。

<余談・奇妙な縁>

平沢進さんの有名な楽曲に「白虎野の娘」という作品があり、これは今敏さん監督の映画「パプリカ」の主題曲になっています。(もちろんこの映画も大好物です)

今敏さんは素晴らしい映画やアニメを遺してはやくに亡くなってしまったのですが、今剛さんというお兄さまがいらっしゃいます。今剛さんは音楽家でいらっしゃいます。

この今剛さんの曲である「マンドリンドリーム」を、夫(ドラマー・当時大学生)が大学の試験曲に選んで演奏していたのです!(数年後にこの曲を2人で一緒に演奏もしました。)

これはまったくの偶然であり、めぐりめぐってとても縁を感じました。

それだけにはとどまらず、平沢進さんが主題曲を手がけた「ベルセルク」(漫画・映画化・アニメ化もされています。)についてです。

夫は人生の中で触れてきた漫画やアニメは数えるほどしかなく、もしかしたら片手で数えられるほどではないかと心配になってしまうくらい私のような人間とは対極の人です。

そんな彼が唯一といっていいほど夢中になって読んでいたのが「ベルセルク」でした。

これはもう奇妙な縁が螺旋階段のようにぐるぐるまわっているとしか思えません!

こんなふうに、人と人とが繋がれば、音楽のほうも奇妙な縁でどんどんつながっていくようです。

あるいは逆に、音楽の奇妙な縁が、人と人とをつないでいるのかも…?

もちろん映画・アニメなどで出会う音楽

音楽というものは、それ単体でももちろん素晴らしいものです。

ところがそれに「魅力的なキャラクター+濃密かつエンターテイメントに富んだストーリー」が加わることにより、鬼に金棒状態になります。もう無敵です。

いわずもがなですが、私自身が幼少期の頃にディズニー音楽から受けた影響ははかりしれません。

ディズニー音楽もまた、ストラヴィンスキーやサンサーンス、チャイコフスキーなど名だたるクラシック作曲家たちの成分がふんだんに散りばめられており、その栄養を小さいうちから無意識に摂取できるような仕組みになっているのです。

ピーマンをこまかくこまかく刻んで入れたチャーハンを、ピーマン嫌いの子供が「おいしい!おいしい!」とぱくぱく食べているような現象がここでも起こっているのです。

ある程度みんながあらすじを知っているような映画には、かならず素晴らしいテーマソングがつきものです。これは映像と音楽がどちらにとっても良い影響を与え合っているからだと思います。

タイタニックの音楽が流れれば、誰もが両腕を広げたくなりますし、そこに居合わせた人は必ずその人の腰に手を添えるでしょう。

ジュラシックパークが流れれば、太古の恐竜たちに思いを馳せ、スターウォーズが流れれば心は宇宙へと飛び立ちます。(もしかしたらUSJと東京ディズニーランドかもしれませんが…)

そしてひとたび音楽を耳にすると、その映画を観たときの記憶や感情まで蘇ってくるのですから不思議です。

アニメのオープニング・エンディングテーマも、夢中で観ていた人にとっては、その人の人生レベルにまで刻み込まれることになります。

いわゆる「アニソン」というカテゴリではくくりきれないほど、多種多様で個性的な楽曲に溢れていて、あたらしいアニメをみるたびにそれと同じだけあたらしい音楽の出会いがあります。

私の思い出のアニソンは「ダンタリアンの書架」のオープニングテーマ「Cras numquam scire」です。美しいソプラノのラテン語で歌っているので、ちんちくりんの高校生だった私は『なんだこの美しい歌は!!』と、衝撃を受けました。

がんばってカタカナでラテン語にルビを振って、カラオケで歌えるように練習したのも、いまとなっては良い思い出です。いまだに歌詞の歌い出しだけは覚えています。

結論:音楽じゃないことをすれば音楽に出会える!

少々極端ですが、つまり本や映画やドラマ、アニメやゲームといった、音楽がメインではないコンテンツに触れてこそ、良い音楽と出会える機会はぐっと深まります。

もちろん!音楽の中だけで音楽を探す能力、センスのある方々は、そのままの出会い方でよいと思うのです。

作曲家同士のつながりをたどっていってみたり、演奏者を聴き比べてみたり、CDを手当たり次第に聴きまくってみたり…。

そういった探し方には相当の熱量が必要ですから、熱意を持って音楽という名のジャングルを探検する偉大な方々を、私は尊敬します。

ところがどっこい私のような勉強に熱心ではないタイプの人間からすれば、いろんなコンテンツを摂取して、そこでいい音楽に出会うほうがよほど効率も良く、印象にも残り、人生の宝物のような曲に出会えることもあるのです。

音楽は人生の宝物です。

いろんな方向にアンテナをのばして、じぶんの「大好物」な音楽と出会いましょう!

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

上部へスクロール