ある方から『エレクトーンとシンセサイザーの違いってなんでしょう?』という質問をいただきました。
どちらも鍵盤の『てい』を成している楽器です。
電子楽器であるという点でも一致しています。なので、どちらの楽器も多種多様の音色を出すことができます。
また、シンセサイザーは1台ではなく、何台も連ねて演奏するプレイヤーが多く見受けられる楽器なので、『鍵盤が何列もある』という見た目の部分も、共通しています。
ぱっと見でこれだけ共通点があれば、このような疑問が生まれるのも当然です。
エレクトーンのことは多少わかっているつもりですが、シンセサイザーのことは、まだ勉強中です。
なので今回は、シンセサイザーという楽器をどのような言葉で定義していくべきか。また、エレクトーンと異なる点はどこかを、考えてみました。
電子オルガンについて
『エレクトーン』という呼び方は、電子オルガンという楽器の中のいち商品名であることを、以前こちらの記事で説明しました。
【呼び方】電子オルガンとエレクトーン
なので、ここでもエレクトーンの総称である『電子オルガン』という名称を使って説明を進めていきます。
電子オルガンとはどんな楽器なのか。と、問われれば、私はこんなふうに表現します。
①上鍵盤・下鍵盤・足鍵盤の3段からなる電子楽器である。
②ひとりで・一台で、完結した・迫力ある音楽が表現できる楽器。
③アフタータッチでの表現が秀逸な鍵盤楽器である。
④メーカーが限られている。
では、一つづつ見ていきます。
①上鍵盤・下鍵盤・足鍵盤の3段からなる電子楽器である。
まずこれは、見た目に関する大きな特徴です。どのタイプも、上鍵盤・下鍵盤は61~73鍵のサイズです。足鍵盤、ペダルユニットは、1.5~2オクターブ分の鍵盤がついています。
この分の鍵盤で足りない音域は、中の機械で『弾いた音』と『実際に鳴る音』の高さをいじって発音します。
②ひとりで・一台で、完結した・迫力ある音楽が表現できる楽器。
次は、特筆すべき一番の(中身の部分の)特徴です。わかりやすく言えば、一人で100人分のオーケストラと同じ音符を演奏することができます。クラシックだけでなく、ポピュラーミュージックも、ジャンルを問わず表現することができます。
ここで大事なのが、『一人で制御しやすい』ということです。
何台ものキーボードやPCを駆使すれば、たとえライブ演奏であったとしても、分厚い音を出すのはたやすいことかもしれません。ところが、機材がバラバラになれば、その操作に追われることになりますし、その分トラブルもついて回ります。
ところが、電子オルガン一台で大まかにでもカバーできれば、制御のしやすさがグンと上がります。
音色のスイッチングは無限にプログラムできて、それを呼び出すのも簡単。操作が限られているので、トラブルに対するとっさのリカバリーもしやすいです。
制御が楽になる、ということは、その分の労力を演奏にまわせます。
ひとりで、かつ作り込まれた音色でよい演奏をするという点で、これほど長けている楽器は他にありません。
③アフタータッチでの表現が秀逸な鍵盤楽器である。
これは②の中身についての補足です。
『アフタータッチ』というのは、鍵盤を押し込んだ際に音に変化がつく(音量が大きくなる、ピッチが上がる or 下がる、表情が変わる、など。)機能のことです。
他のキーボードやシンセサイザーにもこのアフタータッチはついていたりするのですが、電子オルガンのアフタータッチは格別です。
特に、電子オルガンでストリングスを演奏したときに、そのアフタータッチの美しさがいかに優れたものかが発揮されます。
④メーカーが限られている。
電子オルガンを生産しているのは、ヤマハ・カワイ・ローランド、くらいなものです。
探せば世界にも似たような楽器があるのかもしれませんが、ピアノなどとは違い、歴史も浅い楽器ですので、『どこのメーカーにしようか』とは、あまり悩まない楽器と言えます。
シンセサイザーについて
シンセサイザーとはどんな楽器なのか。電子オルガンよりお付き合いの年数が短いなりに、感じていることを表現すると、こんな感じになります。
①鍵盤の形をしていたり、していなかったりする。
②波形の段階から音づくりをする、電子の生楽器である。(アナログシンセサイザーの場合)
③特色・パワーを併せ持った音色で演奏できる。
④メーカーも種類も豊富。
では、こちらも一つづつ解説します。
①鍵盤の形をしていたり、していなかったりする。
同じくまずは見た目の特徴から。これはつまり、シンセサイザーという楽器の心臓が、鍵盤ではない部分にあるからです。
『音づくりをする頭脳』が、この楽器の心臓です。なので、鍵盤のついていないシンセサイザーもあります。
②波形の段階から音づくりをする、電子の生楽器である。(アナログシンセサイザーの場合)
電子オルガンなどに内蔵されている音色は、サンプリング音源といって、もとになる楽器の音を採取して、それを呼び出すシステムによって成り立っています。
デジタルシンセサイザーですと、同じくそういう側面が強いのですが、アナログシンセサイザーとなると、全く違う音の作り方になります。
中学の理科でやったとおり、音というのは波でできています。
その波のかたちをあれこれ操作しながら音色を作っていくことができる、つまり音色をゼロの状態から自由に生み出すことができるのが、このシンセサイザーというわけです。
③特色・パワーを併せ持った音色で演奏できる。
ほぼ②の続きになりますが、音の波を一からいじっていった結果生み出された音には、シンセサイザー独特の『パワーのある音』になります。
パワーといっても、単に音量が大きいわけではありません。
いわゆる『抜ける音』というもので、まるで楽器の中の『人の声』のように、自然と耳に届いてしまう、そんな音色を出すことができます。
この独特な『パワーのある音』というのは、サンプリング音源を基盤とする楽器には、なかなか出すことのできない音色です。
なので、それらの楽器とはまた違ったアプローチでの演奏が可能になります。
④メーカーも種類も豊富。
シンセサイザーと一口に言っても、その種類は世界中に様々あります。電子オルガンの比ではありません。
メーカーや種類によって、目的や、得意とするところもバラバラです。
自分の求めるシンセサイザーを捜し求めるのには、一苦労することでしょう。
まとめ
では、ここまでで出てきた2つの楽器の違いを、まとめます。
(電子オルガン:e.o. シンセサイザー:synth.)
①見た目
e.o.:上鍵盤・下鍵盤・足鍵盤の3段
synth.:鍵盤の形をしていたり、していなかったり
②特徴その1
e.o.:一人で制御しやすい
synth.:電子の生楽器
③特徴その2
e.o.:アフタータッチが秀逸
synth.:パワーのある音色
④種類
e.o.:少ない
synth.:多い
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KOMPLETE 12導入している最中に検索エンジンで立ち寄りました。新しい方からいくつか読ませて頂きました。電子オルガンずっとされてるとのこと。わたしは音楽を習ったことない音痴ですが、ずっとバンドをやってきてはじめギター、そのあと見よう見まねで鍵盤。今はマックでDAWが中心です。友人にはヤマハでエレクトーン習ってた人がいて指がよく動いてすごいなあと思います。音楽やるよりも前に電子とか興味あり当時(1973-4年頃)の電子雑誌にシンセサイザーが載っていてすごく興味が出て1980年代には何台か入手して今DAWに至ってます。そこで電子オルガンとシンセの比較をされているのを読ませていただき、ちょっと一言申し上げたくコメントします。昔の電子オルガンはアナログでしたが、今はデジタルになり、中身はデジタルシンセそのものです。違いは「インターフェース」だけ。つまり操作部分がエレクトーン仕様になっているかいないかだけの違いです。だから、シンセを上下に二つ並べて、足鍵盤のシンセも下において、あと、操作部をエレクトーンふうに作れば、バラバラのシンセもエレクトーンになります。中身の音色とかはメーカーのプリセットやアルゴリズムやモジュールの構成の違いなので、同じ電子オルガンでもメーカーが違えば違うのと同じで、シンセとの音色や操作性の違いは、たまたまその形になっているだけです。全部をコネクトするにはパソコンとかコントロール部分も必要です。そういうものが一つの箱に収まっているのが今時の電子オルガン。今や、エレクトーンは、「見た目一台で全部揃ってるように見えるデジタルシンセ」というだけですよ。では!
ななつぼし様
貴重なお話をお寄せいただき、ありがとうございます!
エレクトーンはシンセの集合体…というお話は初めて聞きました!面白いです。
今後ともけんばんとくらすをよろしくお願いします! kaso