楽譜を読んでいると、ときたまこれらの記号を見かけることがあります。
<リタルダンド>
<フェルマータ>
この2つの記号は、そこだけ曲がちょっとゆっくりになるという共通点があるものの、その違いは明確です。
今回は2つの役割をおさらいしつつ、2つの記号について比較してみましょう。
リタルダンドについて
リタルダンドとは、だんだん遅くという意味です。
具体的にどのくらいゆっくりになるかはその人の解釈次第なところがあります。が、常識的な範囲でゆっくりになることが多いです。
ゆっくりになったあとはどうするかというと…
パターン① 「a tempo」と書いてあったら
→そこからはもとのテンポに戻ります
パターン② そのまま曲が終わるようなら
→いい感じに着地できるようにしてあげます
実際に曲を弾いている中では、「rit.」と書かれているところから1〜3小節くらいにかけて、だんだんゆっくりにすることが多いです。
そんなに長い範囲になることはあまりありません。
フェルマータについて
フェルマータとは、その音符 or 休符を長くという意味です。
該当する音符や休符の上に直接書いてあります。
(そうです!実はフェルマータは弾く音符だけでなく、休符にも作用します。)
とはいえ、実際の演奏では、フェルマータが書いてある音符のちょっと前から減速します。ほんのちょっとですが。でないと、急ブレーキのようになってしまって、あまり具合がよくありません。
では、フェルマータはどのくらい長く伸ばせばよいのか?ということですが、これは完全に「好み」、「解釈」「人それぞれ」です。
しかしそれではクラシック曲の演奏はやりづらいので、主に他の人の演奏を参考にいい塩梅になるよう決めていく感じです。「どのくらいかな?」と思ったら、CD音源などを探してちょっと聴いてみるといいかもしれません。
<ちょっとした具体例>
今になってもよく覚えています。ヤマハ音楽教室の幼児科コースで、はじめてフェルマータが出てくる曲が、「ジプシーの踊り」という曲でした。
これは短調の曲で、楽譜に書いてあったのは16小節ほど。構成でいったら『 A A B A 』という感じの曲です。
この『 B 』の4小節目、最後の音符に、フェルマータが書いてありました。
実際にどう演奏したかといえば、その2つ前の音符ぐらいから減速していました。拍で言えば1拍前からですね。
わりとテンポもゆっくりめな曲だったので、そのくらいの減速がちょうどよかったのかもしれません。
リタルダンドとフェルマータの明確な違い
2つの違いは、何をゆっくりにするか、その意識が向いている対象です。
リタルダンドがゆっくりにして欲しいのは、その小節や、フレーズです。
フェルマータがゆっくりにして欲しいのは、フェルマータがついている音符(休符)ひとつ分です。
しかし、先ほども述べたとおり、フェルマータを実際に演奏すると、そのいくらか前から減速するので、弾く側ではなく聴く側にまわってみると、この2つの違いはあまりわからないかもしれません。
ですが、音楽において(主に弾く側の)『気持ちの問題』はめちゃくちゃ大事です。それが100%と言っても過言ではありません。
小節・フレーズ単位でだんだん遅くなのか。
その1音めがけてだんだん遅くなのか。
こういった気持ち、意識のベクトルがとてもとても!大切です。
余談・フェルマータはバス停のマーク
海外の一部の地域では、フェルマータがバス停のマークとして使用されているそうです。
昔、PICOという幼児向けお勉強用おもちゃがありまして、ノートパソコンに絵本の形をしたカセットをガシャりとさすと、テレビゲームが遊べる時代を先取りした代物でした。
これにどハマりしていた当時の私としましては、PICOについての思い出がわんさかあるのですが、その中でも激ムズだった「おんがくだいすき!スヌーピー」というソフトがありました。
クラシック音楽や、楽譜の勉強ができる(一応幼児向けの)ソフトだったのですが、その中のワンシーンでバス停がでてきます。
そのバス停に、フェルマータが描かれているではありませんか!
フェルマータが描かれた現地・現物のバス停は見たことがありませんが、このスヌーピーのゲームソフトの中で、確かに見たことがあります。
バスが流れる音楽だとしたら、フェルマータにさしかかると一時停止する…。フェルマータの役割を具体的にイメージしやすくなりますし、こんな形で日常生活の中に音楽記号が紛れ込んでいるなんて、日本で暮らしていたらお目にかかれない光景です。
おつかれさまでした
少々余談が長くなってしまいましたが、リタルダンドとフェルマータの違いは…ちょっとゆっくりになるという効果を発揮する「範囲」です!
その小節やフレーズに効果を発揮するのがリタルダンド。
その一つの音符めがけて効果を発揮するのがフェルマータ。
これらの記号が出てきたら、いったん心を落ち着けられる機会を得られるので、ここで心身をしっかり落ち着かせてから、次のフレーズを弾き始められたらよいですね!
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