『タイ』と『スラー』。どちらも音符と音符をつなぐ、『弧』のような形をしていて、外見がとてもよく似ています。そして、どちらもあらゆる楽譜の中で、ひんぱんに見かける記号です。
この画像の楽譜の中に、タイとスラーの両方があります。どれがタイで、どれがスラーかというのは、楽譜を見慣れていないと、見分けることは難しいですね。
正解はこちらです。
では、タイとスラーは、どのように違うのでしょうか。
【タイ】
→読譜の正誤に関わる記号
直近2つの同じ高さの音符を連結して(つなげて)演奏する場合に書く記号。
【スラー】
→あくまで気持ちの問題(音楽では大事)
『こういうフレーズ感をもって演奏してほしい』というときに書く記号。
見た目で判断するには、その両者の性質上、短い方がタイで、長い方がスラーということでほぼ間違いないでしょう。
タイは、ピンポイントで2つの音符を連結するので、おのずと短い弧になります。
スラーはというと、(3〜4音の短いものも多くありますが)1小節や2小節、場合によっては4小節などの長きにわたって記されていることが多いです。
では、実際に譜面と音源の例をつかって、両者を見ていきましょう。
【タイ】の役割
前述のとおり、タイにはとなり合った同じ高さの2音をつなげる(連続音にする)役割があります。
楽譜には、音符をつなげざるをえない状況というのが、日常的に発生しているので、タイはとても使用する機会の多い記号ということになります。
その、音符をつなげざるをえない状況というのが、以下の3つです。
①既存の音符の長さでは対応できない。
②小節をまたいで音符が伸びている。
③タイを使用せずに表記することもできるが、読みにくい楽譜になってしまう。
(以下2つの画像で実際に鳴る音は同じです。)
では、タイの役割をよりわかりやすくするため、タイを使った楽譜と使わない楽譜で、どのように鳴る音が変化するのかを比べてみましょう。
タイを使用しなかった譜面
タイを使用した譜面
このように、タイのあるなしで、まったく違う音が鳴ってしまうことがお分かりいただけたかと思います。
【スラー】の役割
スラーというのはフレーズ感を指示する記号です。(フレーズ感というのは、音楽における呼吸のリズムのようなものです。)
なので、タイとは違い、(いってしまえば)あってもなくても、鳴る音の正しさに影響を及ぼすことはありません。
しかし、音楽を表現するということにおいて、どういう気持ちで演奏したいかということは、あまりにも重要なことです。
演奏者自身がほんの少し『その気』になることが、出る音に120%影響します。
気持ちのある・なしを、正確にわかりやすくお伝えするのはとても難しいですが、自分なりに両者を比較した例をあげてみます。
スラーを使用しなかった場合
スラーを使用した場合
見た目はほぼ同じな『スラー』と『タイ』。
楽譜を読むときにも、自分で書くときにも、その違いがわかっていないと、混乱はまぬがれません。
音楽のあらゆるルールの中で生きていると、ルールの外の感覚を忘れてしまいがちです。
今回は、タイのことを説明しようとした際に、そういえばスラーも見た目がまったく一緒だなとふと気がついたので、両者の比較を柱にした内容になっています。
そうです。音楽にまったく足を踏み入れていない人からすれば、スラーもタイも、どちらもただの弧にしか見えないはずなのです。
音楽に限らず、自分が当たり前のように認識しているルールが、その外側にいる人たちからすれば、まったく当たり前では無い、ということが世の中にはたくさんあります。
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